第1章

 私が重度の中毒者だとは、誰も知らない。

 酒でもなければ、ドラッグでもない。もっと原始的で、もっとも浅ましく、汚らわしい――「結合」への渇望だ。

 この体面ある仕事を維持するために、そして発情した牝犬のように街角で男の愛撫を乞うような真似をしないために、私は毎日あの青い錠剤を飲み続けなければならない。

 あの日、あの忌々しい猛吹雪が、私と三十人の汗とテストステロンにまみれたアイスホッケー選手たちを閉じ込め、あろうことか私が薬を失くしてしまうまでは。

 猛吹雪は狂った獣のように、チームバスの窓ガラスを激しく叩きつけていた。窓の外の世界は白銀の恐怖に飲み込まれ、対照的に車内の空気は、窒息しそうなほどに淀んでいる。

 それは三十人の壮年男性が放つ独特の臭気だ。制汗剤、使い込まれた革の防具、そして目眩がするほど濃厚な、雄の匂い。

「北東北ウルブズ」のマネージャーとして、私、酒井綾子は、バスの最前列に端然と座っていた。背筋をピンと伸ばし、普段ロッカールームで選手たちに檄を飛ばす時と同じように、冷徹な仮面を貼り付けて。

 トレードマークの黒いカシミヤのタートルネックに、キャメルのトレンチコートを羽織り、膝を固く閉じている。

 だが、その幾重にも重ねられた高級な布地の下で、私の身体は悲鳴を上げていた。

 燃えている。皮膚の一寸一寸が、無数の蟻に噛みつかれているようだ。血液が血管の中で沸騰し、あの最も恥ずかしい中心へと奔流となって集まっていく。

 内腿はすでに愛液で濡れそぼり、その不快な粘り気に、私は両脚を強く擦り合わせずにはいられなかった。摩擦で、この発狂しそうな欠落感を少しでも紛らわせるために。

 この、忌々しい吹雪のせいで。

 四時間前、遠征先へ向かう途中で私たちはこの異常気象に見舞われた。バスは荒涼とした高速道路で立ち往生し、その際のパニックじみた急ブレーキの弾みで、私のハンドバッグは――命綱であるあの青いピルケースごと――どこかへ滑り落ちてしまったのだ。

 座席の下を這いつくばって探したが、徒労に終わった。

 薬効が切れ始めている。あの馴染み深い、それでいて恐怖すら覚える飢餓感が潮のように押し寄せ、私の理性をすべて呑み込もうとしていた。

「酒井さん?」

 頭上から、低く掠れた声が降ってきた。

 私は自分でも止めようのないほどビクリと震えた。その声は帯電した鞭のように、張り詰めた私の神経を打ちつける。

 どうにか顔を上げる。そこに立っていたのは、松崎修治。チームのキャプテンだ。

 彼はまるで山のようだった。狭い通路に立っているだけで、圧倒的な質量を感じさせる。

 チームロゴの入ったグレーのパーカーを着て、袖を捲り上げた腕には血管の浮き出た筋肉が露わになっている。その瞳は深く静まり返り、氷結した湖面のように底知れない。

 普段、私は修治に対して徹底した職業的距離を保っている。彼は更衣室の支配者であり、私は管理側の人間だ。

 けれど今、彼が身を寄せた瞬間、その匂いが私の鼻腔を満たした。爽やかなアフターシェーブローションに、微かな煙草の匂い、そして男特有の生々しい体臭。

「監督が近くのモーテルを押さえた。全員降りるぞ」

 彼は言った。その声は、氷上を滑走する時と同じように揺らぎがない。

「……ええ、わかった」

 立ち上がろうとした瞬間、膝から力が抜け、崩れ落ちそうになった。それを、力強い大きな手が私の肘を掴んで支える。

 手のひらの温度は驚くほど高く、ウールのコート越しに体を焦がすようだった。

 私は息を呑んだ。驚きだけではない。そのわずかな接触が引き金となり、下腹部が鋭く痙攣したからだ。

「気をつけろ」

 彼は短くそう言い、その瞳の奥に探るような光を一瞬だけ宿した。

 三十分後、事態はさらに悪化した。

「港屋旅館」という名のその安宿のロビーは、大柄な男たちで埋め尽くされていた。彼らは悪天候への不満を口にし、大声で笑い合い、空気中には私が窒息しそうになるほど渇望している、あの雄の汗臭さが充満している。

「いいか、聞け」

 監督がロビーで声を張り上げ、カードキーを振って見せた。

「四人一部屋だ、詰め込め。それから、マネージャー……」

 監督は私を見て、申し訳なさそうな顔をした。

「シングルはもう埋まってる。しかもこっちの棟は暖房が故障中だ。暖房が効くのはツインの部屋だけらしい。誰かと相部屋になってもらうしかないんだが」

 一斉に視線が私に集中する。若く、精力の有り余ったホッケー選手たちの、様々な意味を含んだ視線。

 普段なら厳しく睨み返すところだ。だが今の私の頭の中は、卑猥な妄想で埋め尽くされている。彼らの汗ばんだユニフォーム、防具の下の筋肉……。

「彼女は、俺の部屋だ」

 修治の声が、喧騒を切り裂いた。

 彼はカウンターの前に立ち、プラスチックのタグがついた鍵を手にしていた。それが当たり前であるかのように、あまりにも平然とした態度で。

「唯一のダブルベッドの部屋だ、他の奴らじゃ狭すぎる。それに、明日の戦術変更について話し合う必要がある」

 ロビーから野卑な冷やかしの声が上がり、数人の若い選手が口笛を吹く。

「黙れ」

 修治が冷ややかに一瞥すると、そのキャプテンとしての威圧感に、冷やかしは瞬時に咳払いへと変わった。

 私は反論しなかった。反論する気力さえなかった。私の身体は熱した炉に放り込まれたバターのように、ドロドロに溶け出していた。男の匂いが充満するこのロビーから一刻も早く逃げ出し、どこかに身を隠したかった。

 部屋は二階の突き当たり、二〇四号室。

 ドアを閉めると、外の風雪音とチームメイトたちの喧騒が遮断された。部屋には安っぽい芳香剤と、染みついた古い煙草の臭いが漂っている。そこにあるのは、たった一つのベッド。中央が少し窪んだ、クイーンサイズのダブルベッドだけ。

 私はドアに背を預け、体の中で火が勢いを増して燃え盛るのを感じていた。

「シャワーを浴びてくる」

 修治はそう言い、アウターを脱ぎ始めた。

 続いてパーカー。そして、Tシャツ。

 ああ、もう。見るべきではなかった。

 だが、露わになった彼の上半身は古代ギリシャの彫刻のようだった。一つ一つの筋肉が爆発的な力を秘め、長年氷上での衝突に耐え抜いてきた鋼鉄の肉体。腹筋を横切る古傷が、彼の呼吸に合わせて波打つ。

 視線を逸らしたいのに、目が裏切る。喉が渇き、股間はすでにぐっしょりと濡れていた。

 浴室からシャワーの音が響き始めた。

 私は震えながら床に座り込み、自分のスカートの裾に手を伸ばした。だめ、ここでしてはいけない。壁一枚隔てた向こうに、修治がいるのに。

 けれど、もう制御できなかった。指先が秘部の湿り気に触れた瞬間、私は堪えきれず、壊れたような嗚咽を漏らした。

 その時、シャワーの音が止まった。

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