第12章

「浩介、打ち合わせ終わった? スープ煮たの。そっちに持って行こうか?」

電話の向こうの声は、いつも通り柔らかい。

森田浩介は胸が大きく上下した。今にも怒鳴りつけそうになった、その瞬間――涼宮佳奈が何かを察したのか、声音に焦りと不安が滲んだ。

「浩介、どうしたの? 機嫌悪い?」

「……なんでもない。すぐ帰る」

通話はそこで切れた。

涼宮佳奈はしばらく呆けたようにスマホを見つめる。意味がわからない。

彼女はそのまま大川成人へ電話し、何があったのかを尋ねた。

大川成人は、知っている範囲をそのまま話した。

森田浩介が帰宅すると、涼宮佳奈がすぐ寄ってくる。声はやけに甘く、やわらかい。...

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