第29章

水原の母も浜原の母も、さっと顔を曇らせた。見るからに不機嫌な色が浮かび、口を開きかける。

だが、その前に水原茜がふっと笑った。ティーカップを置き、ゆっくりと目を上げて井ノ原暁を見る。

「木原さんって、本当に耳が早いんですね。まさか、私がもう結婚することまでご存じないわけじゃないでしょう?」

そう言って、手首の翠のバングルを軽く揺らした。

「それに、私の結婚相手が誰かも見えていないみたい。私はあなたと違って、ここでのんびりアフタヌーンティーをしながら、人の陰口を叩いてる暇なんてないんです」

井ノ原暁の顔が一瞬でどす黒く染まる。周りにいた数人も、そろって気まずそうに顔をこわばらせた。

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