第57章

鈴川薫子が会議室に辿り着いたとき、水原茜はひとり、上座の席に座っていた。背筋を伸ばし、息を潜めるほど静かで――まるで彫像みたいに動かない。

「水原様、今朝は『木野通人には会わない』っておっしゃってたのに」

鈴川薫子は悔しそうに唇を噛む。

「来るってわかってたんです。受付に先に言って、通さないようにしておけばよかった……」

水原茜は小さく首を振った。

「盗人を千日続ける人はいても、千日防ぐことはできないわ」

淡々と、けれど冷めた声。

「向こうは「大きい商談」を持ってきたつもりなんでしょう。あなたが先回りしても、どうにかして私の前に出てくる。待ち伏せでも何でもしてね」

「……何の...

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