第2章
午前四時。私はベッドに丸まり、頬には乾いた涙の痕がこわばっていた。一睡もできず、砕け散った記憶の無慈悲なループに思考が囚われていた。
私がカーターと一緒にプリンストン大学へ出願しようと決めた日のこと。
彼はチームメイトたちに隅へと追い詰められていた。そのうちの一人が工業用ペンキの入ったバケツを掲げている。
「やめて!」
バケツが傾けられた瞬間、私は彼の前に飛び出して庇った。
ドロドロとした冷たい赤い液体が、私を全身ずぶ濡れにした。傍観者たちは息を呑み、誰かがクスクスと笑い出した。
「イザベラ!」
カーターの声が震えていた。
心配そうに顔を歪める彼を見つめ、私はその手を強く握りしめた。
「大丈夫よ」
その夜、自宅のプールサイドで、カーターは私がペンキを拭き取った後に残った頬の傷跡をそっと撫でた。
「俺のために……本当にそこまでする価値があったのか?」
「あなたは何も悪くないわ」
私は彼に告げた。
「あいつらの悪意に負けないで」
突然、彼が顔を近づけてきた。
ファーストキスの瞬間、私の頭は真っ白になった。心臓が早鐘のように打つ。彼は私の額に自分の額を押し当て、囁いた。
「イザベラ、君がいてくれて本当によかった」
あの時の私は、自分が世界で一番幸運な女の子だと思っていた。
だが、カーターがこの関係を公にすることは一度もなかった。人前では、常に礼儀正しく、それでいて意図的に私との距離を置いていた。
今となっては、真実など火を見るより明らかだ。あのキスも、囁かれた愛の言葉も——すべては私にケンブリッジ大学への進学を諦めさせるための餌に過ぎなかったのだ。
すべては、リリーのために。
その記憶が、ナイフのように私の心を抉る。
カーターは隠し子で、彼がセント・ジュード学院に入れたのも、ひとえにヴァンダービルト家財団の援助があったからだ。彼はエリートたちの輪の端で、いつも怯えるように立っていた。
私が彼の手を引き、この見知らぬ世界へと導いたのだ。
十数年。
私はずっと、ある人を必死に守り続けているのだと思い込んでいた。
だが蓋を開けてみれば、私はただ寄生虫に餌を与えていただけだった。
私の目は血走り、赤く腫れ上がっていたが、その眼差しは冷ややかに変わっていた。
どれくらいの時間が経ったのか、スマートフォンの画面が明るくなった。
カーター。
苦い皮肉が込み上げてくる。私は通話を切った。
しかし、玄関のチャイムが鳴りやまない。
私は疲労を押し殺し、階下へと向かった。
ドアを開けると、そこにはこの上なく優しい顔をしたカーターと、彼の背後に怯えたように縮こまるリリー・スミスがいた。
「イザベラ」
カーターは心配を装って微笑んだ。
「どうして電話に出てくれなかったんだ? すごく心配したんだぞ」
「忙しかったの」
私はうつろな声で答えた。
リリーはすぐさま身をすくめ、まるで私を怪物でも見るかのように彼の袖をきつく握りしめた。彼は彼女を落ち着かせるように、その頭を優しく撫でた。
「何の用?」
私はドアの枠に寄りかかって尋ねた。
カーターは咳払いをして、まるで気にも留めていないような口調で言った。
「今週末、フラタニティの正装パーティーがあるんだけど、リリーにふさわしいネックレスがなくてね。君のものを一つ貸してくれないか? 彼女、見下されたくないんだ」
「私なんかが、あなたの持ち物を身につける資格がないのは分かってるの」
リリーが震える声で口を挟んだ。
「でも、奨学金をもらっているからって、他の人に変な目で見られないように、綺麗なネックレスが一つ欲しいだけで……助けていただいてもよろしいでしょうか?」
私が答えないでいると、カーターの穏やかだった表情がたちまち曇った。
「たかがネックレス一つじゃないか、イザベラ? 君はジュエリーを山ほど持ってるだろ。いつからそんなに利己的になったんだ?」
彼の視線が私の鎖骨に落ちた——私は、シンプルでアンティークなダイヤモンドのネックレスを身につけていた。
「実際、そのネックレスなんてぴったりじゃないか」
私は冷たいダイヤモンドに触れ、口元に冷笑を浮かべた。
「これは私のネックレスよ。どうして彼女に貸さなきゃいけないの?」
カーターの顔色が急変した。
私はわざと一歩前に出て、リリーと視線を合わせた。ひどく馴染みのある香りが鼻を突く。
「スミスさん、一つ気になっていたの。あなたが今使っているその香水、小売価格で20万円は下らないわよね。それが買えるのに、パーティー用のネックレスを買うお金はないの?」
リリーの瞳から、瞬く間に涙が溢れ出した。
「と、友達から借りたものです……」
彼女は言葉を詰まらせ、被害者のように振る舞った。
友達。カーターは先週、私のペントハウスのドレッサーから全く同じボトルを持ち出し、「虐待を受けている従姉妹」を慰めるために必要だと言っていたではないか。
「へえ」
私はゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、その気前のいい『お友達』にネックレスも貸してもらえばいいじゃない」
カーターの顔色は、青ざめたり赤く染まったりと忙しく変わった。
「君の施しなんて必要ない!」
彼は怒鳴りつけ、リリーの腕を乱暴に掴んだ。
「俺が自分で彼女に買ってやる!」
彼は私を鋭く睨みつけ、彼女を引っ張って門の前から去っていった。
私は彼らの背中を見送った。私の家族カードに寄生して生きている隠し子が、ダイヤモンドを買うだと? 一体何を使って?
私はスマートフォンを取り出し、プライベートバンカーに電話をかけた。
「私名義でカーター・デイヴィスに発行されている家族カードを、すべて利用停止にして」
電話を切った後、私の指先は首元のダイヤモンドのネックレスをそっと撫でた。
その冷たい感触が、私を三年前の夏のパーティーへと引き戻す。ウィンザー家の真の、疑う余地のない後継者が、私を屋敷の庭の隅へ追いやった時のことだ。
「イザベラ、お前はあの隠し子の弟に近づきすぎだ。遅かれ早かれ、あいつはお前を泣かせることになるぞ。後で言わなかったとは言わせないからな」
私は彼を力一杯突き飛ばした。
「最低ね! カーターはそんな人じゃないわ!」
彼は顔色一つ変えなかった。
「あいつはお前の心を打ち砕くぞ」
立ち去る間際、彼はベルベットの箱を私の手に押し付けた。中に入っていたのは、他でもないこのネックレスだった。
我に返り、私は誰もいない道路をじっと見つめた。
「あなたの言う通りだったわ」
私は低く呟いた。
