第30章 夫の叔父の部屋に住む?

本家まではさほど遠くもなく、気まずい空気は長く続かずに済んだ。

「着いたよ」

立花一夜の声が、目黒千音の思考を断ち切る。

びくりと肩が跳ねて、彼女はようやく我に返った。道中ずっと胸の内がぐしゃぐしゃで、ファイルを開いて確認する暇すらなかったのだ。

車は古雅で端正な佇まいの屋敷の前で、静かに停まった。運転手が先に降り、手際よく一夜の車椅子を整える。

この車は立花一夜のために特別に造られたものだった。緩やかなスロープが備わっていて、車椅子を回すだけでそのまま降りられる。

庭はひっそりと奥行きがあり、植栽は寸分の狂いもなく刈り込まれている。空気そのものが、厳粛で張り詰めていた。

千音...

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