第60章 妙な工場建屋

翌朝。薄明の光が差しはじめる中、目黒千音は濃いクマを残したまま、ゆっくりと部屋の扉を押し開けた。

顔を出した瞬間、扉のすぐ外に男が棒立ちしているのが見えて、心臓がひくりと跳ねる。

「……あ、あの。おはようございます」

眠気は一気に吹き飛んだ。千音は警戒を隠さず、見知らぬ男をまっすぐ見据える。

男は口を大きく開け、間の抜けた笑みを浮かべた。

「おはよう」

距離が近い。近すぎて、息がかかりそうだ。千音は本能的に一歩ぶんだけ後ろへ退きつつ、周囲にも視線を走らせた。

「あなた、誰ですか。どうしてここに……?」

ここは村長の家。となれば――。

案の定、男は次の一言で名乗った。

「村...

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