チャプター 209

ニコラス

ニッキーとはケビンの件で一悶着あるだろうとは思っていたが、まさかこんなことになるとは予想外だった。ニコルが刻一刻と怒りを募らせていくのが見て取れた。これは数ヶ月前にここに越してきた頃の彼女とは別人だ。ニコルにとっても、それは相当こたえているに違いない。こういう状況で母ならどう対処しただろうかと、俺はとっさに考えた。母はいつも冷静で、相手に感情を吐き出させるだけ吐き出させた上で、礼儀作法を重んじる人だった。だから俺は、母が言いそうな言葉を口にした。「落ち着いて、お母さんと私にちゃんと挨拶してくれたら話を聞こう。でも、その態度を改めるまではだめだ」。彼女の感情の爆発はひとまず受け止めた...

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