第246章

ニコル

スパのロビーに、大きな赤いバラの花束を抱えたタキシード姿のニコラスが立っているのを見た瞬間、膝から力が抜けた。彼なしでこんなに長く生きてきたなんて信じられない。今のこの瞬間、私とニッキーが彼なしでいることなんて、もう想像もできないのだから。私が歩けないことに気づいたのだろう、彼がこちらへ歩み寄ってきた。「すごくきれいだよ、ニコル」「あなたこそ……まあ、ニコラス、すごくハンサムだわ」「君の美しさには到底かなわないよ」彼は花を差し出し、私はその香りを胸いっぱいに吸い込んだ。赤いバラが大好きだって、彼は知ってくれている。「ありがとう」彼は私の額にキスをして、腕を差し出してくれた。私はその腕...

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