チャプター 265

ニコラス

ニコルがオフィスを出て行った後、俺はデスクに向かい、ルーサーが送ってきた契約書に目を通そうとした。それも開きもしないうちに、ドアのあたりで騒ぎが聞こえ、続いてカレンがニコルに「このクソ女!」と叫びつける声がした。俺がオフィスから出ると、ニコルがカレンに「放っておいて、カレン!」と叫んでいた。俺が近づいていくのに気づいたのはジェイソンとアントンだけだったが、なぜかアントンは俺が声を張り上げて「今すぐ彼女を離せ、カレン!」と怒鳴りつけるまで、何もしようとしなかった。

途端にフロア全体が、針一本落としても聞こえるほど静まり返った。だがカレンは、ニコルのポニーテールを掴んだまま、まだ突っ立...

ログインして続きを読む