チャプター 56

ニコラス

H&Mに入ると、ニッキーは俺を子供服売り場へと引っ張っていった。明らかに、前に来たことがあるのだろう。「もう手を離してもいい?」「ああ。でも、俺の目に見えるところにいるんだぞ」「わかった」彼女はまっすぐセール品に向かった。商品を眺めてはいたが、どうやら気に入るものは何もないようだ。それから他の商品へと移っていく。俺は片時も目を離さず彼女を見守っていた。何かを手に取っては値札を見て、また棚に戻す。どうやらニコルはセール品しか買えないのだろう。俺は彼女が気に入ったものをこっそり後ろから手に取っていった。彼女はまったく俺の方を見ていない。やがて彼女が振り返り、「ここには好きなもの、何もな...

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