第3章
気まずい雰囲気が流れる中、ちょうどその時、私のスマホが震えた。
私は慌ててスマホを取り出してメッセージを確認する。
メッセージの送り主は河合大輔だった。
『夕、いつ東京に帰ってくるんだ? みんなお前のこと、すごく会いたがってるぞ』
そのメッセージを見つめ、私は画面の上で指をしばらく彷徨わせた。
東京を離れてから、私は意図的にあの頃の仲間たちとの連絡をすべて避けてきた。
『今のところ帰るつもりはないの。ごめんね』
と私は返信した。
『来週、俺の誕生日パーティーがあるんだけど、来ないのか?』
『残念だけど行けそうにない。でも、プレゼントは送るね』
「誰から?」
朝霧蓮が不意に尋ねてきた。
彼はまだ帰っていなかったのだ。
ふと、凛の言葉が頭をよぎる。朝霧蓮は私に好意を抱いているから、ぜひ試してみてほしいと彼女は言っていた……確かに、皆川霜介のためにいつまでも他人の好意を拒み続ける必要もない。
「重要じゃない人」
私は唇をきゅっと結ぶ。
アルコールがまだ私の理性を麻痺させていたのだろう。私はふと、大胆な言葉を口にしていた。
「上で、お茶でも一杯どうですか?」
朝霧蓮の眼差しにどこか暗い光が宿る。彼はわずかに首を傾け、静かな声で問いかけた。
「夜中に男性を部屋に誘ってお茶を飲む、その意味は分かっているんだろう?」
「分かってます」
私は居心地が悪くなり、俯いて自分のつま先を見つめた。
エレベーターのドアが閉じた瞬間、朝霧蓮はそっと私を腕の中に引き寄せ、身を屈めてキスをした。
息が詰まりそうになる。
「監視カメラが……」
と私は心配して囁いた。
朝霧蓮はカメラを一瞥すると、私を自分の体で覆い隠した。
ホテルの部屋の前で、彼はドアの外に立ったまま、真摯な眼差しで言った。
「月咏、今ならまだ後悔しても間に合う」
私は彼のネクタイを引き寄せた。
「私の口紅、キスでぐちゃぐちゃにしておいて、今更やめるって言うんですか?」
「なら、これから君が後悔したとしても、俺はもう手放さない」
彼は真剣な口調で警告した。
街の灯りがともり始め、窓の外の光がちらちらと揺れている。
事の後、私たちは並んで横になり、私は軽い冗談を言った。「朝霧さんって、どのくらい恋人がいないんですか?」
「確かに長いな。ここ数年は仕事に集中していたから」
彼は正直に答えた。
私は一瞬呆然とし、思わず尋ねてしまった。
「大学の時、いつもあなたの周りをうろちょろしてる女の子がいませんでしたか?」
朝霧蓮は軽く笑った。
「ああ、よく一緒に授業を受けていた子のことか?」
私は頷く。
「あれは俺の妹だ」
朝霧蓮は手を伸ばして私の手を掴み、指を絡めてきた。
「じゃあ、恋愛経験は?」私はさらに問い詰める。
「ない。一度も。俺には君だけだ」
彼がこれほど純粋だとは思わず、私は少し後悔した。
「ごめんなさい……こんな軽率な形であなたを誘うべきじゃなかった」
彼は身を乗り出して私にキスをした。
「謝るな。最後まで責任を取ってもらう」
東京、とある高級居酒屋の個室。
河合大輔が皆川霜介にスマホを差し出した。
「見ろよ、夕から返信だ。当分東京には帰らないってさ」
皆川霜介はスマホの画面を一瞥したが、その表情は微動だにしなかった。
「帰ってこようがこまいが、どうでもいい」
誰かが呟いた。
「どうやら彼女、本気でお前とはもう関わるつもりがないみたいだな」
皆川霜介の眼差しが突如として鋭くなる。彼はグラスをテーブルに叩きつけ、乾いた音を立てた。
「誰も彼女に連絡するな!」
個室は一瞬で静まり返り、誰もが彼の突然の怒りに息を呑んだ。
「霜介、じゃあお前が最近、胃潰瘍で入院したことは、彼女に知らせるのか?」
河合大輔がおずおずと尋ねた。
皆川霜介は答えず、立ち上がってジャケットを手に取り、個室を後にした。
夜の闇の中、皆川霜介は一人で街を歩いていた。
別れてから、月咏夕からメッセージは一通も来ていない。
彼はスマホを取り出し、見慣れたアイコンを見つめると、怒りに任せて彼女のLINEと電話番号をすべてブロックした。
「泣いて戻ってきても、俺に許しを乞うなよ」
彼は冷たく独りごちた。
「もう二度と、お前に甘い顔はしない」
一週間後、私は約束通り河合大輔への誕生日プレゼント——限定版のカフスボタンを郵送した。
これは朝霧蓮が選んでくれたもので、大輔の趣味に合うだろうと彼が言っていた。
ギフトカードに短いお祝いの言葉を書き、荷物を配達員に手渡した。
誕生日パーティーには直接参加できなかったけれど、この気持ちが伝わればいいなと思う。
ほどなくして、私のスマホが鳴った。
朝霧蓮からの着信だった。
「仕事は終わった?」
「うん、さっき確認して送ったところ」
私は笑って答えた。
「今夜、新しくできた懐石料理を食べに行かないか? すごく美味しいらしい」
朝霧蓮が言った。
「そこのアイスクリームが特に有名なんだ。君が好きだったと思って」
再びアイスクリームという言葉を聞いて、私はしばらく固まってしまった。
私はずっと甘いものが好きで、特にアイスクリームが大好きだった。でも、皆川霜介はそれが子供っぽいと嫌い、一緒に食べてくれることは決してなかった。だから次第に、私も甘いものを食べる回数が減っていった。時々友人にデザートショップに誘われても、「いいよ、私、甘いもの好きじゃないから」と笑って断るようになっていた。
何年も経つうちに、私は本当に甘いものが好きではないのだと思い込んでいた。でも、朝霧蓮にそう言われて、ふと気づいた。心の中では、今でも自由に、楽しく甘いものが食べたいと思っている自分に。
「ええ、すごく楽しみ」
私は答えた。
夜、私たちは料理店に着いた。朝霧蓮は甲斐甲斐しく私のために椅子を引き、食器が清潔か確認し、温かいお茶を淹れてくれる。
まるでお姫様のように、彼に丁寧に扱われている。
だが、こういったことは、以前はすべて私が皆川霜介にしていたことだった。
夕食の途中、河合大輔から写真付きのメッセージが届いた。
写真には、怪我をした皆川霜介の手の甲が写っており、指の間から血が滴り落ちていた。
続いてテキストメッセージが届く。
「お前が送ったプレゼントを見て、あいつ、グラスを叩き割ったぞ」
私はメッセージをじっと見つめ、どう返信すればいいのか分からなかった。
