第97話

カーター視点

その日は一日中、街の様子を見て回っていた。だが、すぐに退屈してしまったので、時間もいい頃合いになったところでバーに入り、ビールを注文した。

俺は誰に関わるつもりもなく、カウンター席に座ってビールを片手にテレビの試合を眺めていた。すると、ある男が隣に座ってきた。

俺より年上に見えたが、せいぜい二、三歳といったところか。

関わり合いになる気はなかったが、彼はブツブツと何か呟いていて、誰かに話を聞いてほしがっているようだった。

「何か悩み事か?」と俺は声をかけた。

「ああ。俺、兄貴に殺されるかも」

「まあ、兄弟なら分かってくれるだろ」

「あんた、兄弟は?」彼が尋ねてきた。

「い...

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