第102章

結城朔夜は、目の前で椎名遥の顔が大きく迫っているのを見て、まだ半分も開いていなかった瞼をぱちりと見開いた。

――見間違いだと思った。

さっきまで、兄の影が見えたはずなのに。どうして椎名遥に変わっている?

それに、なぜ彼女が自分のそばにいる?

目を見開く。

違う。見間違いじゃない。そこにいるのは確かに椎名遥だ。

さっき見えたのも確かに兄だった。ただ一瞬、朔夜が意識の底から浮き上がった、その刹那――椎名遥が自分の身体で兄を背後に押しやったせいで、視界が入れ替わっただけだ。

椎名遥が、兄を後ろに押しのけた。

結城朔夜は眉根をわずかに寄せる。不快感が、その表情に薄く滲んだ。

「朔夜...

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