第63章

椎名遥は、わずかに目を見開いた。

結城家の旧邸にいる使用人を一人、金で抱き込んでいる。今の話は、その口から入ったものだ。

結城朔夜が椎名瑚夏を拒んだと聞いた瞬間、遥はこう思った。

あの日、車の中で瑚夏が朔夜に色目を使って、でも失敗したのだ――と。

使用人も言っていた。

瑚夏が「結城朔夜って、年いってる」と口にした、と。

けれど遥は、それも拒絶された女の負け惜しみにすぎないと思っていた。

この世に、結城朔夜を好きにならない女の子なんているわけがない!!!

だから今わざわざ口にしたのは、椎名瑚夏が困った顔をするところを見たかったからだ。気まずくなって、恥をかいてくれればいい。

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