第65章

彼女はにこにこと笑いながら言った。

「従兄、今日はまだマシじゃない。そんなにおじさんってほどでもないし、ちゃんと格好いいよ」

そう言って、瑚夏は結城朔夜に向かって親指を立てる。

「……」

瑚夏にからかわれた。

「朔夜、わざわざ戻ってきたのか?」

身動きの取れない結城悠馬が、鍼を打たれたまま寝た姿勢で口を開く。

本当は――瑚夏ちゃんに会いに戻ってきたのか、と聞きたかったのだろう。

「忘れ物をした」

「従兄の秘書さん、辞めちゃったの? 天下の社長様が、忘れ物ひとつで自分で取りに戻るなんて」

瑚夏は軽い調子でそう言った。

けれど、その何気ない一言に、結城朔夜の目がかすかに揺れ...

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