第66章

結城朔夜の抱擁はきつかった。胸板は熱く、瑚夏には彼の胸の奥で激しく打つ鼓動まで聞こえてくる。

突き放そうと思えば、できた。

けれど、瑚夏はそうしなかった。

昏睡に悩まされ続けてきた結城朔夜が、それが「悪い兆候」ではなく、むしろ「良いこと」だと知った瞬間の気持ちくらい、想像がつく。

結城朔夜がどれほど強くても、人は人だ。

人は誰だって、死が怖い。

いま彼が自分を抱きしめるのは、ただの発散先が欲しいだけ――瑚夏はそう思った。

だが、瑚夏は知らない。

結城朔夜の受けた衝撃は、そんな単純なものではない。

彼は、自分は長くないと思っていた。すでに「その後」の段取りにまで手をつけていた...

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