第82章

帝華ホテルには、結城朔夜のために特別に確保されている特級個室が二部屋ある。

だが小林子安のほうは急な用件だったため、ホテル側に空きがなかった。

商談なのにロビーでは落ち着かない。そこで結城朔夜に頼み、もう一方の個室を借りることになった。

どちらも最上階。

――それで、偶然が重なって鉢合わせた。

瑚夏の姿を見つけた瞬間、渡辺明山の顔がすっと曇った。

この娘に会うたび、ろくなことがない。

露骨に不機嫌そうな顔で、まずは瑚夏を睨みつける。

次いで、結城朔夜を横目で値踏みした。

見覚えはない。顔立ちは確かに整っているが、ラフな私服姿が「その辺の無名」と勝手に判断させる。

――とこ...

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