第96章

瑚夏がどうしても食堂へ行くと言い張ると、前田東は大股でその前に回り込み、愛想笑いを貼りつけた。

「でしたら少々お待ちください。電話して、簡単な料理を何品か作らせますので」

「いいえ。私たちは従業員食をいただきます」

前田東の目が、すっと細くなった。

ほんのしばらく黙り込み、腹の底で何かを計算する。

やがて結論が出たのか、あの笑みが再びその顔に浮かんだ。

「これは私としたことが。渡辺社長が初めて工場をご視察なさるんです。従業員食も体験していただかないといけませんね」

前田東は大股で先に立った。

「どうぞ、こちらへ」

食堂は1階にあった。広々としていて風通しもいい。白いテーブル...

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