第5章
沙良視点
自室に戻ったばかりの時、控えめなノックの音が聞こえた。
「沙良?俺だ」
驚いた。今夜の夕食での一悶着の後では、みんなに避けられると思っていたから。
「入って」
涼は気まずそうな顔で入ってきて、私の椅子に腰掛けた。そして長い間、黙り込んでいた。
「この間のこと、謝りたくて」と、彼がようやく口を開いた。「道で、お前に失礼な態度をとった。俺……精神的に参ってたんだ。でも、言い訳にはならないよな」
私は驚いて、読んでいた本を置いた。涼が私にきちんと謝ってくれたのは、これが初めてだった。
「それに今夜」と彼は続けた。「お前を庇ったのは、同情とかそんなんじゃない。心から...
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チャプター
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2. 第2章
3. 第3章
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