第6章

美咲視点

蓮司を突き放した翌朝は、まるで霧の中を歩いているようだった。棚を整理する作業を、ただ機械的にこなす。手は動いているのに、頭はどこか別の場所にあった。

「美咲? もしもーし、美咲?」

ビクッとして、抱えていた本の束を落としそうになった。戸口には、真理が眉を上げて立っていた。

「びっくりしたじゃない」

「三回もノックしたんだけど」彼女は後ろ手にドアを閉め、私の顔をじっと見つめた。「泣いてたの? 目が真っ赤に腫れてるわよ」

「大丈夫。ちょっと寝不足なだけ」

「嘘つかないで」彼女は腕を組んだ。「何があったの? 『何でもない』なんて言わないでよ。三年の付き合いだけど、こんな...

ログインして続きを読む