第7章

美咲視点

滝のように降る雨で、何も見えなかった。ワイパーは最高速で動いているのに、まったく役に立たない。外の世界は、ただ水と風と灰色の景色だけだった。

「ママ、こわい」

後部座席から、蘭の小さな声が聞こえた。

「大丈夫よ、もうすぐお家だからね」。嘘だった。家はまだ遠い。私たちは桜通りの真ん中で立ち往生していて、道路がほとんど見えなかった。

ハンドルを強く握りしめすぎて、手が痛かった。

車が、ぎりぎりとひどい音を立てた。そしてダッシュボードの警告灯が、すべて赤く点滅しながら一斉に点灯した。

エンジンが、ぷつりと止まった。

キーを回す。何の反応もない。もう一度、今度は...

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