第140章 もう一目見れば、離れがたくなるのが怖かった

最後の一言が、西園寺蓮の心を完全に打ち砕いた。

もう戻れないのか?

いや!

戻れるはずだ。

戻れるに決まっている。

十年の想いがあるんだぞ。

どうして戻れないなんてことがあろうか。

だが、ソファに身を預けて瞳を閉じた彼の耳に、昨晩の九条圭吾の言葉が亡霊のように蘇る。

『九条莉奈の病状は深刻だ。彼女が我々九条家にとって、目に入れても痛くないほど可愛い娘であることは知っているだろう。万が一、彼女の身に何かあれば、九条家総出で神崎彩を許しはしない』

『今の君に、神崎彩を守り抜く力があるのか?』

『君の西園寺グループは今、いくつもの難題に直面している。それだけで手一杯のはずだ。そ...

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