第154章 不審車両

男は手際よく彼女の崩れ落ちる体を支え、同時に素早い動きで落下するスマートフォンを受け止めると、通話中の電話を切った。

橘薫は何が起きたのか分からず、焦燥に駆られて声を上げた。「アヤちゃん? アヤちゃん?」

返事はない。

橘薫が画面を確認すると、通話はすでに切れていた。

押し間違えて切ってしまったのだろうか?

橘薫はかけ直した。数回コール音が鳴った後、また切断された。

不吉な予感が、橘薫の胸を覆い尽くす。

神崎彩は彼女が心配していることを知っている。自分から切るはずがない。間違いなく、何かあったのだ。

橘薫は悪い想像を振り払おうとしたが、脳裏に最初に浮かんだのは水瀬遥人の顔だっ...

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