第176章 痛くしたか?

優しい声が頭上から降ってきた。

神崎彩は気が狂いそうだった。今日は一体どういう厄日なの?

ただでさえ訳も分からず彼にキスしてしまったというのに、今度は髪の毛が彼のボタンに絡まるなんて。

この光景を目の当たりにした近藤七海は、どこか楽しげな様子で水瀬遥人に声をかけた。「水瀬社長、車を回してきます」

水瀬遥人は短く応じると、神崎彩の頭に手を伸ばし、絡まった髪を解こうとし始めた。

神崎彩は、彼の胸に寄りかかる姿勢を強いられることになった。

自分の髪がどうなっているのかは見えない。ただ、彼が真剣に髪と格闘している気配と、規則正しい吐息が耳元を掠める感覚だけがあった……。

微かな熱と、ゾ...

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