第179章 彼女に口で叫ばせる

神崎彩はすっかり忘れていたはずだった。しかし、その言葉を聞いた途端、今朝の出来事がまざまざと脳裏に蘇ってしまった……。

彼の唇は柔らかかった。女の子のそれよりもずっと柔らかく、清冽で心地よい香りがした。伝わってくる体温、そして――キスの感触が、あまりにも良すぎて……。

キスの感触が、良い?

神崎彩は自分の思考にハッとし、勢いよく両手で自らの頬を叩いた。私はいったい何を考えているの!?

受話器の向こうで、橘薫がその気配を察し、艶然と笑った。「何考えてるの?」

「別に! 何も考えてないわよ」

神崎彩は即座に否定した。その口調は早口で、あまりに潔すぎた。

「図星かしら?」

「……」...

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