第182章 彼は男色に目覚めたくせに、彼女を嫌うなんて

まさか、栢野の一件で機嫌を損ねたのだろうか。

京見隆明も不運だ。とばっちりを食らったようなものだ。

彼女は余計な詮索はせず、手短に告げた。「水瀬社長、先に荷物を上に運びます」

言いながら、彼女は両手に一つずつスーツケースを提げた。

たかが一泊の出張だ。中身は着替えと日用品程度、さして重くはない。

一人でも十分運べる。

だが階段を上り始めた矢先、不意に伸びてきた手が、片方の荷物をさらっていった。

続いて、もう片方も軽くなる。

振り返れば、そこには水瀬遥人の姿があった。

荷物は二つとも、彼の手にある。

神崎彩は呆気に取られた。社長がアシスタントの荷物持ち?

どんな極上の福利...

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