第183章 私に食べられたいのか

「彼がそこへ足を踏み入れるかどうかなど、彼女には関係のないことではないか?」

神崎彩は心の中でそう思った。彼がそんなことを訊いてくるなんて、妙な話だ。

水瀬遥人は言った。

「どうした? 答えにくい質問か?」

神崎彩は一瞬ためらった。

彼の意図は測りかねたが、少し考えて、正直に答えることにした。

「怖いです」

きっぱりとした、揺るぎない一言だった。

水瀬遥人は眉をわずかに上げ、彼女を見る眼差しを和らげた。

「なぜ怖い?」

神崎彩はたった一言で返した。

「汚いですから」

普段は心の中で水瀬遥人に悪態をつくこともあるが、彼女にとって彼は潔白な存在だった。太陽のように眩い光を...

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