第187章 馴染み深くも恐ろしい処方

栢野実(かやの みのる)が自ら口火を切り、安仲和菜(あんなか わかな)には絶好の口実ができた。彼はすぐに言葉を継いだ。

「水瀬(みなせ)社長はご存じないでしょうが、和菜ちゃんは本当に不憫な子でしてね。私の友人の娘さんなんだが、性格は素直で、成績も優秀な現役の女子大生なんですよ。

ところが少し前、彼女のお父さんが亡くなられてね。お母さんは病弱だし、お兄さんは酒浸りでどうしようもない。

可哀想に、この子は父親を亡くした悲しみに耐えながら、病気の母と駄目な兄の面倒を見て、その上バイトを掛け持ちして学費まで稼いでいるんです。

数日前にはお母さんの容態が悪化してしまってね、手術費だけでも数百万...

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