第151章 あなたを愛したことはない

林田景司の声はひどく低かったのに、江口式の耳の奥をきん、と鳴らした。

江口式は反射的に視線を落とす。胸のざわつきを隠すために。

愛していたか――?

彼のために三年間、家庭に入った。妻としての役目を全うしようと、できる限りのことをしてきた。彼女の気持ちなんて、誰の目にも明らかだったはずだ。

それなのに林田景司は、いまさらそんなことを訊く。

つまり彼は、江口式の想いを「無視していた」のではない。

最初から――見えていなかったのだ。

笑えるほど、滑稽だった。

「……ない」

吐き捨てるように言葉がこぼれた。血の隅々まで悔しさが満ちて、全身が強張る。江口式は顔を上げ、もう一度はっきり...

ログインして続きを読む