第20章 本当に保坂臣を手放したのか

江口式はスマホのスピーカーをオンにし、枕元へ置いた。毛布をぎゅっと引き寄せて身体を包み、胸の奥から這い上がってくる冷たさを隠す。くぐもった声で言う。

「保坂臣。私と江口馨の関係って、まだ修復できると思う?」

「君は姉だろ。妹なんだから少し譲ってやれ。昔のことはもういい。年上の人間の過ちで、あの子が責められる筋合いはない。馨だって被害者なんだ」

保坂臣が言いたいのは、吉田詩乃が江口信年と不倫したのはあの二人の罪で、江口馨には関係がない、だから江口式が許せということ。

――確かに、江口馨は生まれを選べない。

でも、どう生きるかは選べる。

母が亡くなったあと、吉田詩乃は江口馨を連れてこ...

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