第28章 紳士は偽善者になった

薬を取ってきてもらうだけなら、ついでで済む。だけど食べ物まで買ってこいと言うのは、さすがにやりすぎだ。

それでも江口式は、林田景司が引き受けるかどうかを試したかった。

冷えた笑みを口元に浮かべて林田景司を見つめる。まるで、自分が要求してはいけない理由が分からないと言わんばかりに。

林田景司はその場に立ったまま何も言わず、腕時計に視線を落とすと、黙って歩き出した。

扉が外からそっと閉まる。

――受けたんだ。

そう確信しても、世話を焼かれた嬉しさなど欠片も湧かなかった。むしろ断ってくれたほうが、よほどよかった。

結婚したばかりのころ、江口式は林田景司の冷淡さを肌で感じていた。

夏...

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