第29章 二人だけの世界

「……お母さま」

夏川媛が林田景司のことをかばっているのだと悟り、江顔は言葉を挟んだ。

「今の仕事、本当にいいんです。上司もよくしてくれてますし、私、ほんとに大丈夫です。だから……そんなに心配しないでください」

夏川媛をまっすぐ見つめる瞳に、迷いはなかった。

その様子に、夏川媛は小さく息をつく。

「わかったわ。でもね、今回みたいなことは……もう二度と起こしちゃだめよ」

少し間を置いて、さらに言う。

「私はね、本当にあなたのことが可哀想で……心配でたまらないの」

その一言で、江顔の涙は堪えきれなくなった。

俯いたまま、ぽた、ぽた、と止めどなく落ちていく。

夏川媛は慌てて指先...

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