第32章 殉情?

「いいえ……」

「じゃあね、切るよ」

江口式が断る間もなく、通話はぶつりと途切れた。

夏川媛は迎えに来ると言っていた。――どこへ連れて行くつもりなのだろう。

もし水の苑へ戻らなければ、夏川媛は気づく。自分がすでに林田景司と別居していることを。

江口式は無意識に下唇を噛み、俯いたまま思考を巡らせる。そこへ坂東逸世の声が滑り込んだ。

「江口先生、この病室、窓からの眺めがすごくいいですね。明日は晴れるそうですし、きっと景色も気持ちいいはずです」

坂東逸世は窓辺に立ち、外をきょろきょろと見回す。

「本当はもっと快適な部屋に替えてもらおうと思ったんですが……この感じなら、必要なさそうで...

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