第70章 三十日

林田景司の視線が付箋から弁護士へ移り、「いい」と合図する。

あまりにもあっさり承諾したものだから、弁護士は慌ててパソコンを開き、追加条件を書き足した。

進藤林は相変わらず賛成できない顔だったが、これ以上は口を挟めなかった。

修正後の離婚協議書が刷り直され、二部用意される。

江口式が先に署名し、書類を林田景司の前へ滑らせた。

林田景司が自分の名前を書き入れるのを見届けた瞬間、江口式の張り詰めた表情が、ほんのわずか緩む。

進藤林はずっと江口式を観察していた。

ここまで迷いなくサインするとは、正直意外だ。

直感が告げている。江口式という女は腹の底が読めない。まだ別の算段があるはずだ...

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