第11章

騒ぎが起きたのは、その言葉が最後まで続くより早かった。

「えっ……あれ、雲雀奥さんじゃない?」

ざわ、と会場の空気が揺れ、視線がいっせいに入口へ集まる。

香椎早希は月白のロングドレスをまとい、ひとりの男の腕にそっと手を添えて現れた。

裾には銀糸の刺繍がひそやかに走り、歩くたび、月の光がさらさらと流れていくようにきらめく。

それは雲雀京介が彼女のために誂えたオートクチュールではなかった。けれど、あの一着よりもなお彼女に馴染んで見えた。まるで最初から、香椎早希のためだけに仕立てられていたかのように。

その隣に立つ男は、すらりと背が高く、黒のハンドメイドスーツを隙なく着こなしていた。無...

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