第25章

「香椎さん、お車のご用意が整っております」

先頭に立つ女がドアを開け、恭しく「どうぞ」と手のひらを向けた。

黒のセダンに乗り込む直前、香椎早希はようやく足を止め、振り返る。

「……誰の差し金?」

女は感情の波ひとつ見せずに答えた。

「八神さんのご指示です」

――やっぱり、彼。

胸の奥がわずかにざわつく。けれど早希は、顔には出さない。

車内に滑り込み、セダンは揺れもなく走り出す。向かう先は、福田栄一が滞在しているホテル。

香椎早希はスマホを取り出し、トーク画面を開く。指先が数回、画面を叩いた。

【ありがとう】

ホテルのレストランに着いたのは、まるで時計に合わせたみたいにぴ...

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