第54章

車内は薄暗く、雲雀京介は前だけを見据えてハンドルを握り続けた。道中、いっさい口を開かない。

香椎早希も同じだった。横顔を窓に向け、流れていく街の灯りを無言で追う。

株式譲渡契約書は、彼女の手元に雑に置かれている。まるで、どうでもいい紙くずみたいに。

ほどなく警察署に着くと、雲雀京介は駐車を済ませ、香椎早希を連れて中へ入った。

待合スペースには、香椎の母と香椎健弘、そして竹内結菜の三人が並んで座っていた。

香椎の母はティッシュで目元を押さえてすすり泣き、香椎健弘は苛立ちを隠そうともせず、脚を小刻みに揺らしている。竹内結菜は隅の椅子に身を縮め、青い顔で、いかにも「可哀想な人」を演じてい...

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