第69章

ほどなくして、車はマンションから少し離れた交差点で停まった。

香椎早希は八神煉に軽く礼を言い、ドアを押して降りる。

八神煉はその背中を見送っても、すぐにはエンジンをかけなかった。スマホを取り出し、松井洋一へ発信する。

「ミナスの契約、もう一割落とせ」

「……」

その一言で、松井洋一は魂ごと震えた気がした。

「五割でも赤字ですよ。さらに一割って……うち、慈善事業でも始めたんですか?」

「問題ある?」

八神煉の声が、三分ほど冷える。

「ありません!」

松井洋一は反射で背筋を伸ばし、やけに張った声で言い切った。

「すぐ手配します! 香椎さんに八神グループの温かさ、必ず感じても...

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