第9章

香椎早希の指先が、わずかに止まった。

瞳は水面みたいに静かで、深い。

送ってきたのが誰かなんて、考えるまでもない。

さっき、みっともなく逃げ出した「親友」以外に、こんな挑発をわざわざ急ぐ人間がいるはずがないのだから。

香椎早希はスマホの画面を落とした。

場所が別なら、竹内結菜が出ても構わない。

雲雀奥さんなんて肩書き、いまの自分に貼られても吐き気がするだけだ。

けれど——。

あの席に集まる名家の人脈は、雲雀京介のものだけじゃない。香椎早希が積み上げてきた分も、確かにある。

これまでは「雲雀奥さん」として、雲雀京介の隣で、世間知らずの美しい飾りでいられた。

でも、今は違う。...

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