第5章
美乃里が小走りで駆け寄ってきて、わざとらしく驚いたような顔を作った。その視線は私と覚の間をせわしなく行き来し、悪意に満ちた歓喜の光をチカチカと瞬かせている。
「亜由美さん、本当に彼とお付き合いを?」
彼女は息を呑むふりをして、大げさに口元を覆った。
「こんなに早く新しい恋を見つけるなんて思わなくて……あまりにも自然な乗り換えですね」
私を浮気女に仕立て上げようとするその魂胆。私は彼女を真っ直ぐに射抜くように見つめ返した。
「『芸術のため』なんて言い訳をして、人の邪魔ばかりするどこかの誰かさんとは違うの。本当に反吐が出るわ」
美乃里は頬を朱に染め、弘光の袖を引いて鼻をすすっ...
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