第8章

病院の病室内。

松本航が高橋の腕を掴んだ。

高橋は松本の手を振り払い、その表情は怒りと言っても差し支えないほどだった。

「放っておいてくれ! 今後俺が死んだとしても、もう彼女に電話するな」高橋の声は鋭く、耳障りだった。

松本は深く息を吸い、口を一文字に結んだ。

「義和、お前はなぜ穂乃美の前だと、いつも大人げない子供みたいになるんだ?」

高橋は答えず、ただ俯いて両手を固く握りしめた。内心では松本の言葉を認めていたが、わけのわからない悔しさが口を開くことを許さなかった。

自分が過ちを犯しながらもそれを認めたくない時、いつも彼はこの様だった——俯きたいのに、悔しさが邪魔を...

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