第29章

狩野邸。

浴室の蛇口は全開にされ、熱湯が白い湯気をもうもうと立ち上らせていた。

絵里奈は浴槽の中に沈みきっている。

肌は真っ赤に茹だっているのに、温度なんて感じていないみたいに、硬いブラシを握りしめ――太腿を、胸元を、首筋を、狂ったようにこすり続けた。

真琴に触れられた場所。

カメラの前でさらされた場所。

汚い。

「……落ちない……」

水面に薄い赤が広がる。ブラシで擦り切れた皮膚から滲んだ血だった。

どれだけ洗っても、大勢の前で辱められたあの「汚れ」の感覚は、骨の髄にまで染みついて剥がれない。

賢治が最後に向けた目。

衝撃と、失望と、自分に突き放されたあとの呆然――忘れ...

ログインして続きを読む