第30章

深夜。

絵里奈は、がらんどうの社長室にひとり座っていた。手元のデザイン画は涙で滲み、もはや元の線も判別できない。

――もう、限界だった。

震える手でスマホを取り出し、指が勝手に動くまま、暗記してしまった番号を押す。

「……もしもし」

受話口から返ってきたのは、冬月正明の、体温のない声。

「お父様……」

絵里奈の声が揺れる。

「わたし……帰りたい……家に……」

「帰る?」

正明が苛立ったように遮った。

「戻ることばっか考えるな。お前の母さんは会いたくないってさ。縁起でもない」

ツー、ツー。

切断音。

絵里奈はスマホを握りしめたまま、冷たい呼び出し音を聞き続けた。

...

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