第33章

帰りの車内は、死んだように静まり返っていた。

真琴は革張りのシートに深く腰を沈め、長い指で膝を、トン、トン、と一定のリズムで叩く。その視線は、隣で小さく縮こまっている女へ――冷たく、陰湿に突き刺さっていた。

絵里奈のドレスはすでに汚れている。地べたを這いずったせいで、絹の生地は擦り切れ、ところどころ破れていた。

「――あいつを助けるためなら、随分と身を捨てられるんだな」

真琴がふいに口を開く。密閉された車内で、その声だけが妙に湿って響いた。

「前は俺に水を一杯持って来いと言っただけで、露骨に顔に出したくせに。今度はその間男のために、N市の名士連中の前で犬みたいに這った。絵里奈、お前...

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