第36章

一方、西村家の屋敷。

かかりつけの医師が賢治の脚の裂傷の処置を終え、血に濡れたガーゼを黙々と片づけていた。

賢治はソファにもたれ、顔色は紙みたいに白い。ふくらはぎにも腕にも分厚い包帯が巻かれ、麻酔がまだ残っているはずなのに、本人だけが異様に落ち着かない。体の奥から焦りが噴き上がっているようだった。

「いつまで騒ぐつもりだ」

リビングの中央に立つ西村健一が、出来損ないの弟を見下ろす。指先に挟んでいるのは、狩野側から届いた警告の書面だった。

「女ひとりのために犬に噛まれ、人前で晒しものにされ、挙げ句の果てに両手を潰されかけた。賢治……西村家の顔に泥を塗るのも大概にしろ」

「兄貴には…...

ログインして続きを読む