第40章

絵里奈は最後の茶渋を拭き取り、ぎゅっと雑巾を絞った。きっちり畳んで、テーブルの隅に置く。

それを終えると、壁に手をついて立ち上がった。

火傷したふくらはぎは腫れ上がり、少し動かすだけで声が出そうなほど痛む。

リビングはがらんとしていた。二階からは瑠璃の甘い笑い声、真琴の低く優しい返事、両親の気遣う声が降ってくる。

――なんて、あたたかな家族。

そこに自分が混ざれば、汚点になるだけだ。

絵里奈は誰も呼ばず、誰も邪魔せず、屋敷の重い扉を押し開けて外へ出た。

引き止める声はない。気づく者さえいない。

空はすっかり墨色で、雲が頭上まで垂れ込めていた。

ゴロゴロ――!

稲妻が空を裂...

ログインして続きを読む