第44章
絵里奈は、自分が床にうつ伏せてどれほどの時間を過ごしたのか、わからなかった。
病室へ戻ってからずっと、壁際の隅に身を縮めている。
かつて絵筆を握っていたはずの両手で、膝をきつく抱え込む。視線の先には、床の一角――乾き切って黒ずんだかぼちゃのスープの染み。
あれは、父がくれた、数少ないぬくもりだった。
たぶん、もうすぐ介護士が拭き取ってしまう。
何も残らない。
自分には掴みようもないそのぬくもりすら、瑠璃は嘲る材料にするのだ。
「……ほんと、バカ」
顔を腕の中に埋め、ひび割れた唇をわずかに動かす。自嘲の息が、かすれて落ちた。
必死に求めていたあたたかさは、結局――あの女の、退...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
14. 第14章
15. 第15章
16. 第16章
17. 第17章
18. 第18章
19. 第19章
20. 第20章
21. 第21章
22. 第22章
23. 第23章
24. 第24章
25. 第25章
26. 第26章
27. 第27章
28. 第28章
29. 第29章
30. 第30章
31. 第31章
32. 第32章
33. 第33章
34. 第34章
35. 第35章
36. 第36章
37. 第37章
38. 第38章
39. 第39章
40. 第40章
41. 第41章
42. 第42章
43. 第43章
44. 第44章
45. 第45章
46. 第46章
47. 第47章
48. 第48章
49. 第49章
50. 第50章
51. 第51章
52. 第52章
53. 第53章
54. 第54章
55. 第55章
56. 第56章
57. 第57章
58. 第58章
59. 第59章
60. 第60章
縮小
拡大
