第53章

「牢屋へぶち込め!」

知代の甲高い叫びが、ざわつく空気を切り裂いた。真琴の腕にすがりつき、怒りで全身を震わせる。

「殺人未遂よ! この狂人、うちの娘を殺そうとしたの! 一生、檻の底で腐らせなさい!」

車椅子の冬月正明が、疲れ切った目を堪えきれず閉じる。

「絵里奈……お前には心底、失望した」

「黙れ」

真琴が荒々しく知代を振り払う。勢いが強すぎて、貴婦人はよろめき、砕けた花瓶の破片の山に突っ込みそうになった。

真琴は誰も見ない。血走った目だけが、ボディーガードに壁へ押さえつけられた絵里奈を刺し貫いている。

俯いた頭。黒髪が顔を覆い、口端から垂れる血だけがぽた、ぽた、と絨毯へ落ち...

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