第57章

消毒液の匂いが鼻を刺す。刺々しくて、やけに馴染み深い。

絵里奈は目を開けた。滲んでいた輪郭が、じわじわと形を取り戻していく。

頭上は、病院特有の、やけに白い天井。点滴の管の先で、液体が一滴ずつ落ちている。ぽたり、ぽたり。まるで命の残り時間を数えているみたいに。

指先を、わずかに動かす。――動く。

息を吸おうとすると、胸の奥で、折れた骨が裂けるように痛んだ。

……死んでいない。

絵里奈は一度だけ瞬きをした。もともと死人と大差ないその瞳に、巨大な失望が滲む。

どうして、生きてるの。

どうして、あの蛇どもでさえ、私を殺してくれなかったの。

「ずいぶん不満そうだな」

冷たく刃のよ...

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